【エッセイ02】春

April 10, 2017

 

 

 

私の住む埼玉では、桜が満開だ。

春だ。

空気が暖かい。日が出ている昼間はポカポカして気持ちがいい。

朝も気持ちがいい。

冬のように朝目が覚めてベッドの中で、寒い。ここから出たくない。と渋ることもない。

日の出も日に日に早くなり、部屋の中も温まっているのがわかる。

ベッドからはいつでも、気持ちよく出られる状態だ。

 

でも、出ない。

この「いつでも出られるんだけど、このとてつもなくちょうどいいぬくい状態を味わいたい」のだ。

毛布にくるまり、ぬくぬくしたい。

自分の体温で温まったベッドをまだ堪能したい。

しかし起きねばならない。目覚まし時計も容赦なく鳴る。

ほんの少しばかりのぬくぬくタイムを味わい、春も渋々起きる。

 

 

ここ数年、春を感じる手段は、リアルに暖かい空気になっていると気づく。

以前は新年度の雰囲気が、春を感じさせていたと思う。

学生時代は特に、学年が変わるという大きな変化があってわかりやすかった。

桜が咲く暖かい春のある日、新しい教室に入り、新しい友達、新しい担任に会う。

新しい教科書を開き、初めて折り目を入れる。

新しいことづくめの日々がしばらく続く。とにかく新鮮なのだ。

あの、ちょっと緊張も入り混じったわくわくした雰囲気、好きだったなぁ。

嗚呼、青春の日々よ。

 

 

大人になるとそんな雰囲気もなかなか味わえなくなる。

会社員時代はまだ、新年度になりましたね的な感じはかろうじてあったが、今は…。

ないなぁ。本当にないなぁ。

あの、ちょっと緊張も入り混じったわくわくした雰囲気、どうやったら味わえるんだろうか。

やっぱり学校かなぁ、と思い立ち専門学校のサイトを見てみたりする。

春の雰囲気を味わうのに年間100万円くらい必要みたいですよ。

そうかぁ、年間100万円かぁ。

大金持ちになったら、できるなぁ。と、「大金持ちになったら」という最高にくだらない妄想は始まる。

 

 

 

 

先日、夕食を食べ終えたところで夫に、「新年度になると、新年度になった!という気分になるのか」を聞いてみた。

ある。と言う。

「あの、ちょっと新鮮でわくわくした感じだよ?あるの?今でもあるの?」

「どんな時そう感じる?異動とかで新しい人が来たりするから?そう?そう?」

もう、羨ましくてぐいぐい。

そうだね。という答えを聞き、やっぱりいいなぁと思い

TVで流れているプロレス番組に気が逸れ、この話題はあっけなく終わる。

 

 

そして、しばらくしてキッチンで片づけをしている時にまた思い出し、「新年度を感じるにはさぁ」と言い始め、「まだそんなこと言ってんの。」と言われる。

 

 

くだらなくおめでたい悩みで、私の春は始まるのである。

 

 

 

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Aya Isohata

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